そして学園という名の王国の日々は続く

1月29日に横浜迷宮会というサークル名で始まった、迷宮キングダムのキャンペーンが終わりました。GMの暗転丸さんは「全滅させる勢いでシナリオ作ったから。ま、全滅してもそれはそれって事で」という発言をしてました。PL全員ガタガタ震えだします。
今回は分岐があり実際には4フロアしか攻略しませんが全5フロア。部屋のそれぞれに最後の冒険という物寂しさと緊張感を漂わせる雰囲気を醸し出しつつ説明されていきます。
ラストバトルはGM作成のオリジナルルールにより戦闘フロア数が倍で、2ターン後より宮廷の本陣からどんどん崩れていき、それに巻き込まれると即死という恐ろしい戦場です。
12フロア全てが見えるわけでなく6フロアまで見えていて、宮廷全員が3フロア分進むと次の3フロアが見える、3回連続の戦闘と言う感じでした。
最初に見えるのはこれまで幾度となく戦ってきた小鬼王国の面々と10レベルの傀儡使いみたいな奴。
次に見えてきたのはヴァララカールとフォーりナーと二面
最後は神聖昇降機解放軍と生きた柱とエルフ、そして狐人ピアニカ(大魔道士)という面々。
とても苦しい戦いでしたが、宮廷全員がたまたま取った、又は生き残る為に取ったスキルと、たまたま手に入れたアイテムや逸材。それぞれが運良く組み合わさり、何処までも堅実な戦術でダイス運の悪さを吹き飛ばし、何とか撃破!!ハッピーエンドになりました。
PLの皆さん、最後までダイス運は酷かったですけど、本当に皆で力を合わせて勝てました。ありがとう。そしてGMの暗転丸さん、最後まで何とも繊細なシナリオのパワーバランスの調整をして、ハラハラドキドキしたセッションをしてくれてありがとうございました。

では、ここから下はいつもの如く国王の独り言みたいなものです。ハイ。

− ひとつの旅は終わりました −
− それはふたつの国の争いから始まりました −
− そこに私達の学園…国が混じってみっつになり −
− 星の王子を巡って四方八方へ駆けずり回り −
− 先は見えず星の王子を返す策は五里霧中 −
− そうしている内に狐人ピアニカの陰謀に巻き込まれ −
− それでも、ほうき星へ星の王子は帰っていきました −
− 全ては事も無く終わり −

……
そして、私達の旅も終わりました。

…むぅ、どうもこの喋り方は苦手じゃ。元に戻そう。

とにもかくにも、星の子…まあ今は星の王子か。そこから始まった騒動は王子をほうき星に返し、星の宴を執り行う事により全てが終わったのじゃ。思えば辺境の小国である妾達の学園「ミスカトニック州立アンナタール高校」はそれなりに平和で穏やかな生活から随分と離れてきたものじゃと、そう感じる。

ハグルマとメトロの二つの大国に睨まれる星の子をその懐に入れながら、星の子を返す手段を模索している内にドミトル妄想騎士団に目を付けられ、その侵攻から身を守るべく…今では妾達の学園の者となった「積み木崩しの計都」の力を借りて迷宮嵐で王国を別の場所に転移してみれば、大都会と呼ばれるほど大きいホラアナ城の直ぐ傍に来て、アオヒゲ公の后である狐人ピアニカに目を付けられ、妾と薫はアオヒゲ公にまで目を付けられる始末。

最初の頃は小鬼達にすら悲鳴を上げていた妾達じゃったが、この騒動は妾達を一回りどころではなくもの凄い勢いで強くしていったのじゃ。強さは個々の強さだけでは無い。宮廷というこの学園を運営して行く、妾達の絆も強くしたのじゃ。妾はそう思っている。

それでもかの名立たるピアニカは強かった。権力も本人も。妾達の学園を滅ぼすとそう言われた時、そしてそれを行えるだけの実力があり、それを実行していると携帯電話で知らされた時、妾は目の前が真っ暗になった。それは妾達を助けてくれた方々によって防がれたのじゃが。それはまた後程に話したい。

星の宴を目に出来たのは、しかもそれがほうき星という特等席で見る事が出来たのは本当に僥倖じゃったと思う。宴はファンファーレのような様々な音楽と、色とりどりの光、そして天井も床も開いたり閉じたりするという真にすさまじい現象じゃった。

星の王子は言っておったな。迷宮化を続けると、そのうち凝り固まってしまうと。それをかき混ぜ、解きほぐす必要があると。
それが、星の宴と。この百万迷宮に存在するものは全て迷宮化という『律』に縛られる。それを引っ掻き回し『律』を変える…そう、これが【確『律』変動】と。

その宴で見えた確固とした天井では無いという不安な気分にする青い天井…後からストーンズに聞いた所、それは天界にある「空」と呼ばれるもので、天井というものではないらしい…上から何が降ってくるのか分らない場所に住むとは、天使という者達は本当に妾達、人には解らぬ感性を持っておる。

また逆に固き床の無い深き場所も見えた。これは「海」と呼ばれる場所だそうな。床がないとは…それでは歩く事も座る事も、ましてや寝る事も出来ぬではないか!?深人もまた、妾達には謎な存在じゃ。

星の宴が終わった後は、ほうき星が撒き散らしたチーズでそこら中が凄い事になっておったな。たまたま宴が執り行われたのがホラアナ城の間近…本当に間近じゃったのだが、アオヒゲ公含めてホラアナ城もすごい事になっておったわ。こっそりと笑ってしもうた。

あのチーズまみれで王宮長屋の者たちは大喜びじゃった。まぁ迷宮モヤシしか食っておらぬ奴らが高タンパク質のチーズを食べられるチャンスが来たのは良き事じゃろ。保存も利くし。

無論妾達の学園もチーズ塗れになっておった。じゃがそのおかげで死んでしまったと思った生徒たちが生き残っておったのじゃ!
本当に妾は嬉しゅうて飛び跳ねてしまった!


それから、学園を掃除し(無論、妾達の学園もチーズは貴重な食料として有効活用させてもらったぞ)元の生活を始めた。ホラアナ城の近くに移り、これで妾達の学園も都会の仲間入り!と喜んでおったのじゃが、また迷宮嵐によってホラアナ城から遠く離れた辺境の地に飛んでしもうた。生徒一同ガッカリもしたが、あれだけそこら中に目を付けられた妾達の学園、まだまだ吹けば飛ぶような小さな集団じゃ。ここを纏める者としてはホッとしてもおる。

そして今。

大吾は今日も学園の警護をしておる。
なにやら時折恐ろしく後悔した表情をする。何があったのじゃろうか。多分星の宴の時に叶えてもらえる願いでなにやら失敗したんじゃろうなぁ。愚痴を聞いてやるのもここを纏めるものとしての務めじゃろか。

アダムスキーは今日も学園内外の様々な事件を新聞として書いておる。
だが、そろそろ「今週の陛下」とかいう記事で妾にこすぷれをさせるのは止めぬか?というかおぬしが持っているフィルムを妾に渡すが良い。むしろ抜き打ち検査でひったくる。そう決めた。

薫は今日もだらだらと自堕落に過ごしておる。
何やらやる気を出したか?と思ったら次の週辺りから妙な雰囲気を醸し出したカップルが保健室前で並んでおる。しばらくするとベビーブームが来た。…どうやら、薫のおる、学園の保健室はホテル・保健室と名前を変えていたらしい。風紀を正すべく、そのうち抜き打ち審査が必要じゃと思うが、皆はどう思う?
…まぁ、薫の部屋に入るのはその、妾は怖いのでどうしようかと悩む所じゃが。あのおかしな衣装がのう…

亜理沙は今日も至らぬ妾を助けるべく、傍らよりそっと力を貸してくれる。
アイドルとしてファン達を時には兵士として規律を守るための警護隊に、時には自らの情報収集の為の調査兵としてと配下を上手く使い、そして自らも学園の為に働く。この国で縁の下の力持ちとはまさに彼女の為にある言葉じゃ。
妾では目の届かない場所に手を延ばし、まつりごとに必要な人員を集めたり、時には暴走する大往生を止めるなど、本当に妾は感謝しておる。これからも妾と宮廷を見捨てる事無く、ともに行こうぞ。

大往生はあれから15もの子を計都との間に設け、日々子育てに励んでおる。取りあえず、頑張り過ぎじゃ。
少しは落ち着いたかと思ったのじゃが、願いの時に「ハーレムが欲しいハーレムが欲しい」という従者とは思えぬ寝言をほざいておったので、まぁ死ぬまであのままじゃろう。
相も変わらず傲岸不遜、天上天下唯我独尊を貫き通しておる。そろそろ、見せしめの為にちょんぎって宦官にしてやろうか、あの汗国の女王の助言が頭をかすめる。じゃが、大往生はやはり妾達の学園に無くてはならない存在じゃ。あの強烈な個性はやはり人を呼ぶ。そして学園は大きくなってゆくのじゃからな。

妾は…まぁ、いつもと変わらぬ。強いて言えば3年になった位のものじゃろか。今年で生徒会長の座も降りるだけじゃ…と思ったら宮廷の皆に「その次は空席の学園長になって頂くわけですな」とか言われた。
まだまだ、休めぬらしい。
そうそう。学園が遠い辺境の地に飛んだ際に離れておった国土…と言うかキャンパスじゃな。これと、ほうき星に向かうときに乗った「ケン・セント・アンドレ」号はなんと隣接する場所に集まったのじゃ。これまで行き来するのが大変じゃったそれぞれのキャンパスは行き来しやすくなった。神様も、時には粋な事をするものじゃ。

宮廷以外で変わった事と言えば……
時々ダイナ…おっと、違ったわ。片目の冒険者が妾の国に度々来るようになった。何やら「ここは気を張らずに住む。居やすいな」との事で、大往生や大吾と酒を酌み交わしておるらしい。妾も時々茶を共に飲む事がある。
主に戦争、この学園の問題点の享受をされておる。…妾は苦手じゃが。たまには他の話も良かろうに。会う度もう少し威厳を持てと言われるので、そこを改善すれば戦争話は減るかのう?

他にはアレクサンドライト公主が時々やってくる。女王としての立ち居振る舞いをいつも享受してもらっておる。喋り方は妾と似ておるが…妾より下々を統率するという意味合いでは向こうの方が何枚も上手じゃ。ふぅ、もう少し威厳を持つ、かぁ…うむ、頑張ろう。

そうそう、妾が願った事は…星の王子とこのまま別れるのも侘しいと、時には遊びに来いと言ったのじゃ。そうしたら新学期に、交換留学生として入学しおった。今日もいーかげんに生徒をやっておる。まぁ妾としては嬉しい限りじゃ。

さて…そろそろ日々の締めとして…(これから先は経営の数字やら、今後の学園方針やら色々と事務的な事が書いてある)

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「全く国王は相変わらずロマンチストだぜ。オー、よしよし泣くな泣くな」(背中の子供をあやしつつ)
「まぁ、陛下はそれだから良いのです。人道に反した事を嫌う心優しい所があるからこそなのですよ」
「つーか、警備も良いけどそろそろ俺達に褒美が無いもんかね。主に異性関連で」
「だったら、私の所に来なさいな。良い娘紹介するから…それはともかく、あのロマンチストな所がもう少し前面に出ると良いのにねぇ。きっとお店で一番になれるのに」
「陛下だからそれは無いでしょう。それより次はどんなコスプレをさせますかね。学園新聞の華として、一面の写真に載せたいんですけど」

……ちょっ、お前等!!何を妾の日記を読んでいるのじゃ!人のものを勝手に読むとは!!妾はこれでもこの学園の長なのじゃから敬意を払い、言う事を…

「カッカッカッ!陛下は全く面白い事を言うもんだ。んじゃ出るとすっか」
「私は止めたのですが、多勢に無勢でしたので」
「んー。お説教が長くなりそうねぇ。帰って寝るわ」
「おいおい、寝るなよ。今日は学園の特別日だろ。そっち行けよ」
「まぁ、何か面白い特ダネがあると思ったのですけど、残念でした」

口々に言いたい事を言いつつ部屋を出て行く宮廷の面々。妾のプライバシーすらぞんざいに扱われておる。折角の花見だというのに酷いものじゃ。
新入生も入り、いい具合に日も経った。今日は新入生歓迎会を兼ねた『花見』を行っておる。妾は配下達に場所のセッティングなどをしておった。その隙に見られたらしい。おのれ。

…まぁ、よい。今日は素晴らしい『花見』日和じゃ。星溜まりで時々出てくる「桜星」がそこら中で美しい光を放っておる。ほんの数日で「桜星」は粉々に砕け散りながら、迷宮の中に星吹雪を散らしつつ消えてゆく。
美しく、幻想的な光の乱舞。儚いからこそ見とれるその輝きを頭上に見ながら、妾達は新入生と歓談し交流を深めてゆく。星の王子は向こうで大吾の頭の上でとぐろを巻きながら騒いでおる。

妾は迷宮の奥を見つめる。そこにあるのは闇ばかり。先の見えぬ所は妾達の学園の未来と一緒じゃ。
じゃが、頭上を見よ。桜色に輝く「桜星」の輝きは目がくらむばかりに美しい。宮廷の皆も、生徒達もみな一様に笑顔になっておる。

先の事を考えて暗うつとするのが馬鹿馬鹿しくなって来た。妾達は、まだ若い。先が見えなくて不安になっても仕方あるまい。少なくとも、今はとても楽しく、学園も平和じゃ。今を楽しむのが、妾達が今一番重要視すべき事なのかもしれぬ。ただ、突き進む為に、今は休むべきなのじゃろう。

一つの事件は終わった。じゃが妾達の生活が終わった訳ではない。また明日からも学園生活は続くのじゃから。

もう一度、上を見る。鼻の上に「桜星」の欠片がのる。何やら、妾はふと笑いたくなった。まあ、良い。これで良いのじゃ。



おわり。