悪夢って程じゃないけど怖い夢

僕は何かに追われているらしい。相手は果てなく強く、僕は人々に匿われる。
場所は村だ。大きな神社があって、それを中心に民家が建ち並び、少しその通りを抜けるとすぐに田んぼのあぜ道になる様な田舎。

僕は僕本人ではなく、他の人みたいだった。とてもか弱くて、とても怖がりな女の子。だからこれ以降は私という一人称で書こう。

村の人々からは好かれていたみたい。色々な人が声を掛けてくれていた気がする。ちょっと起きた瞬間の怖さで、その辺りの覚えが曖昧だけど。

その何かは見えないが、村人の数人は感知する手段を持っていた。相手は強烈な穢れみたいなモノで、清められた場所からその何かが近づくとあっという間に穢れるらしい。その穢れを村人は見る事が出来る。私には出来ないのでその人達の言う事を信じるしかない。ただその何かが強烈な恐怖を感じさせる事だけは薄ぼんやりと分った。

村で祭が執り行われていた。神社の仲では人々は何かの動物を模した踊りを踊っていた。
外を歩くのは怖いけど、でも私はお祭りを見たくて外を歩いていた。様々な踊りをする村の人達。

突如踊りが変わる。何でだろう?と、私が思うのが早いか、村人(確かおじいさん)が
「こっちへ」
手を引いてその場を離れようとする。ああ、何かが来たのだと私は感じる。とてつもなく怖かった。

小さな民家に導かれる。そこは清められていてその何かは近寄れない、らしい。如何せん私には見えないので推定でしか言えない。
「猫の子一匹すら入れません。お一人で不安でしょうが、少々我慢してください」
私はその民家の中に保護された。他の村人は一度外出するらしい。よく判らないけど。

暇なので私はぼんやりしていた。何もする事は無いし、何も出来なかった。その時。
何か嫌な気配を感じた。私に対してだけ強烈な興味心を持った視線で見ている…私には何も見えないのに。その視線の元は、窓の外からだった。
怖くて仕方ない。私は心の中で「入ってこないでください。どこかへ行って!」と祈る事しか出来なかった。

しばらくするとその気配は消えた。どうやら村人か帰って来たらしい。
凄くほっとして、でも迎えに出るのが怖くて、私はその人たちが入ってくるのを待っていた。
何も無かったか。大丈夫かと尋ねられて、うん、大体大丈夫。でもなんか途中で変な視線を感じたの。怖かった。みたいなことを言った。村人は3人ほど心配げに来てくれる。2人部屋に入った所で私はすっかり安心していて、3人目を迎えに玄関まで向かった。その玄関には、猫が居た。

限られた村人しか入れないはずの場所に。

猫の子一匹すら入れないように清められているはずなのに。
その異常に思い至り、恐怖する。何?この猫の姿をした何かは。


怖い。

怖い。

怖い。


私は声にならない悲鳴を上げて部屋の中に、逃げ込む。部屋の隅まで、さっきまで安全だった部屋の隅っこへ。

二人の村人が何か?とこちらを見た瞬間。部屋の空気が変わった。
ぴん、と張られた糸のような雰囲気すら醸し出していた部屋が突然緩んだかのように。
白色から何か薄汚れた色が混ざりだしたかのように。
その雰囲気の変化に怯える私。

気付くと部屋への入り口には猫が居た。さっき見た猫だ。
ただの猫のはずなのに、寅縞の猫にしか見えないのに。

それが異形の何かと、自分に害を与えると私の本能が警笛を鳴らす。
次の瞬間、猫は女性に変化していた。

逃げなきゃ。もう早く。
何処かへ。何処へ?分からない、でもここに居るのは駄目。
そう思っているのだけど、足が震えて動かない。背中に壁があって後ずさる事も出来ない。私、もう駄目かなと。そう思う。

そこへ村人がその女に殴りかかる。3人がかりでも、その女の姿をした何かの方が優勢だった。私は、怖くて震えている事しか出来ない。頭の中は真っ白だ。

どうしよう。外へ逃げる?でも外が安全なの?怖い。


そこで目が覚めた。うう、何か嫌な夢だ。